2018/10/10
富士山が『富士山-信仰の対象と芸術の源泉』として2013年にユネスコの世界遺産に登録されてから、今年で5年が経ちます。登録名にもあるように、富士山は古来より霊峰として信仰の対象となるとともに、その稀有な風貌から数多くの芸術家にインスピレーションを与えたことが評価され、文化遺産として登録されました。
富士山の名は奈良時代から見られ、「万葉集」などの和歌や、「竹取物語」「伊勢物語」などの文学作品にも登場します。
絵画では、平安時代後期の延久元年(1069)に製作された≪聖徳太子絵伝≫が、富士山を描いた現存最古の作品です。鎌倉時代には絵巻物に物語の背景として富士山の姿が多く登場し、室町時代に入ると富士山を礼拝の対象として描く≪富士参詣曼荼羅≫や、また伝雪舟筆≪富士三保清見寺図≫など富士山を描いた山水画が広まります。そして江戸時代には、江戸からもよく見える富士山は浮世絵の主題や風景となり、葛飾北斎≪富嶽三十六景≫などが出版されます。浮世絵がヨーロッパに輸出されると、富士山もまたその名が欧米に知られるようになりました。明治時代になると、富士山は近代日本の象徴として位置づけられ、絵画から工芸、デザインまであらゆる美術のモチーフとして扱われます。絵画では日本画はもちろん、西洋から新しく入ってきた油絵でも描かれ、現代まで富士山を描いた作品は数知れません。
アイアートでは、今週末10/13㈯に開催される秋季特別オークションにて、片岡球子や葛飾北斎≪富嶽三十六景≫の内2点、尾形光琳、平松礼二などによる、富士山を描いた作品が出品されます。片岡球子は富士山について、圧倒的な大きさと限りなく変貌する姿に驚きながらも親しみをもち、その威容を捉えようと数多くの富士を描きました。今回出品作2点もまた、画家独特の構成と大胆な色彩によって、堂々たる富士山が表されています。
日本一高く、周りに他の山がない独立峰で、扇を逆さにしたような優美な形をもち、季節や時間によってさまざまに表情を変える富士山は、一千年以上もの間、多くの画家を魅了してきました。
第54回オークションでは、今回ご紹介した作品の他に、ベルナール・ビュッフェや加山又造、棟方志功などの絵画作品や、浮世絵、工芸品、宝飾など160点近くの作品が出品されます。またオークションに先立ち、10/10㈬~10/12㈮の間に下見会も行い、オークション出品作品を全て手にとってご覧いただくことができます。
ぜひ皆様のご来場をお待ちしております。
〈オークションのお報せ〉
秋季特別オークション
■開催日:2018年10月13日(土曜日) 14:00~
■下見会:
10月10日(水) 10:00-18:00
10月11日(木) 10:00-18:00
10月12日(金) 10:00-15:00
■会場:東京都港区新橋5-14-10 新橋スクエアビル3F