ギリシャ文化と西洋・東洋美術のつながり

2021/09/01

 今年の夏は、オリンピック・パラリンピックの話題で盛り上がっています。
 近代五輪は、2500年以上昔の古代ギリシャでおこなわれた競技会をモデルとし、フランスのクーベルタン男爵によって創始されたことで知られています。
 オリンピックだけでなく、哲学・科学・文学などの分野でも、古代ギリシャの文化は後世に大きな影響を与えました。
 そして美術では、ギリシャ文明は西洋のみならず、遠くはなれた東洋にとってもかかせない存在です。

 古代ギリシャの美術といえば、≪円盤投げ≫や≪ミロのヴィーナス≫といった、リアルな人体表現をもつ彫刻があげられるでしょう。
 ギリシャ彫刻は、≪円盤投げ≫の均整のとれた人体や、≪ミロのヴィーナス≫の黄金比に基づいた優美な造形のように、自然で理想的な人体美を追求しました。
 古代ギリシャで発展した美術は、そのあと古代ローマにも受け継がれましたが、中世ヨーロッパになるとギリシャ美術のリアルな表現は途絶えてしまいます。
 しかし15世紀のイタリアにて、ギリシャ文化を復興する運動、すなわちルネサンスがおこります。巨匠・ミケランジェロがギリシャ彫刻を研究したように、ギリシャ美術は多くの芸術家のお手本となり、その後のヨーロッパにおいて芸術の美の基準となりました。

 一方、東洋とギリシャ美術のつながりとして重要なのが、仏像の誕生です。
 インドで信仰されていた仏教には、もともと仏像をつくる伝統がありませんでした。
 しかし紀元前4世紀、ギリシャ人のアレクサンドロス大王がギリシャからインドまでまたがる大帝国を築くと、帝国各地にギリシャ文化が伝わります。
 そして紀元1世紀ごろ、北インドのガンダーラと中インドのマトゥラーで、仏像の制作がはじまりました。とくにガンダーラ仏はギリシャ彫刻の影響がつよく、波うつ髪や彫りのふかい顔など、まるで西洋人のような姿でつくられています。
 ガンダーラで生まれた仏像彫刻の技術はその後、中央アジアを経て、中国・朝鮮・日本にまで伝わり、各地で発展をとげました。

 オリンピックや、さまざまな地域や時代で芸術のターニングポイントとなったギリシャ美術のように、現代でも意外なところに古代文化の影響が残されているのかもしれません。

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■下見会:
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9月16日(木)10:00-18:00
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