2019/06/24
第58回オークションでは、近代洋画の巨匠・梅原龍三郎の作品7点が出品されます。梅原の各時代・題材の作品が集まっており、並べて見るだけでも梅原の足跡を辿れ、梅原芸術を堪能することができることでしょう。
1888年(明治22)、梅原龍三郎は京都の絹問屋に生まれ、幼い頃から家業の友禅染の華麗な意匠を身近に見ながら育ちました。
15歳の頃に画家を志すと、画塾に入って洋画を学び、20歳でフランスへ留学します。そしてパリでルノワールの作品に衝撃を受けた梅原は、自身の作品を持ってルノワールを直接訪ね、「君には色彩がある。デッサンは勉強で補えるが、色彩はタンペラマン(天性)だ」と高く評価されました。
西洋絵画を吸収した梅原は1913年に帰国しますが、西洋の画材である油絵で、柔軟な日本の風物を描くことにとまどいを覚え、日本人としての新たな油絵を模索します。そして、桃山美術や琳派などの日本の伝統に立ち返り、時には日本独自の岩絵具や和紙をも用いて、ついにルノワールが感嘆した華麗な色彩と東洋的な装飾性をもつ、梅原独自の様式を確立させていきました。
梅原が探求した題材のひとつが裸婦です。梅原は日本人独特の美しさを捉えようと努め、裸婦の逞しく息づく生命感を鮮やかな色彩とともに表現します。今回出品作品では、梅原芸術の黎明である1930年代から成熟の1940年代、そして晩年の1970年代までの裸婦像4点がそろい、いずれも「梅原らしさ」を放つとともに、梅原芸術の多彩な変化も楽しむことができます。
一方、梅原は風景も数多く描きました。戦後、「富士は何時見ても新鮮で美しく、直ぐ描きたくなる」と言葉を残すように、梅原はLot.139≪富士山図(内浦)≫など、富士山の連作を手がけ、堂々とした威容を表現しました。また、梅原は留学以降も度々ヨーロッパを訪れ、風光明媚な景色をのびのびとした筆致で鮮やかに描いています(Lot.139-5≪南伊ソレント風景≫)。
ルノワールも好んだ薔薇のモチーフには、梅原も心惹かれました。Lot.139-6≪薔薇図≫では、印象的な色彩と太い輪郭線、岩彩のマチエールが合わさり、花の生き生きとした生命力が表現されています。
西洋の模倣ではなく、日本の文化を糧として華麗な画風を誕生させた梅原龍三郎。ぜひ、今回出品作品ひとつひとつから、その芸術を味わってください。
第58回オークションでは他にも、上村松園や杉山寧、ベルナール・ビュッフェなどの絵画、その他コンテンポラリーやジュエリー、陶磁器など397点が出品予定です。
ぜひ、皆様のご来場をお待ちしております。
〈第58回 オークション〉
■開催日:2019年 7月6日(土)12:00~
■下見会:
7月3日(水)10:00 – 18:00
7月4日(木)10:00 – 18:00
7月5日(金)10:00 – 15:00
■会場:〒105-0004 東京都港区新橋5-14-10 新橋 スクエアビル3F