2021/05/24
image courtesy to Kyoto National Museum, Public domain, via Wikimedia Commons
現在、国宝≪鳥獣人物戯画≫が、東京国立博物館の特別展にて出品されています(現在休館中)。京都・高山寺に伝わる本作は、4巻の絵巻物で構成され、とくにウサギやカエルが描かれた甲巻が有名です。
この作品の1番のみどころは、やはりユーモラスな動物たちでしょう。水遊びや相撲、ケンカや法要をする姿は人間味にあふれ、かわいらしくもありながら、滑稽でもあり、ふしぎな魅力に満ちています。
何の目的で制作されたのか?主題は何なのか?など、いまだに多くの謎に包まれていますが、展覧会で出品されるたびに話題となる人気の名品です。
日本美術では≪鳥獣人物戯画≫のほかにも、人間のようにふるまう動物を描く作品が多くあります。
たとえば、16世紀ごろの≪鼠草子絵巻≫では、着物や烏帽子を身につけたネズミたちを描き、江戸時代の浮世絵師・歌川国芳は、歩いたり踊ったりする猫や金魚の作品を残しています。
また、奇想の画家・伊藤若冲は、入滅する釈迦を大根に、悲しむ仏弟子たちを京野菜にみたてた≪果蔬涅槃図≫を描き、室町時代から知られる≪百鬼夜行絵巻≫では、付喪神(つくもがみ)に変じた道具が手足を生やして練り歩くなど、生物以外のものでも人を模した作品が多くあります。
一方、西洋美術では、動物が人と関連するモチーフとして描かれる場合、風刺や寓意(アレゴリー)などといった役割がみられます。
風刺画では、人を模した動物も描かれますが、その背景には社会などへの批判などを伝えます。古くから新聞やポスターなどでもみられ、現代ですと、バンクシーがネズミを労働者階級の代理として描いたり、政治批判のために議員に扮したチンパンジーを描くなど、ユーモアをまじえながら強いメッセージを発しています。
寓意(アレゴリー)とは、ある事物に特定の意味をこめた、西洋美術の表現技法のひとつで、たとえば犬は忠節や貞節のシンボルとして扱われ夫婦の肖像画に表されます。
またキリスト教の西洋では、文字が読めない庶民でも聖書の話をわかりやすくするため、絵画で羊や魚はキリストの象徴、鳩は聖霊の象徴として描くといった決まりがあります。
日本と西洋の表現のちがいを比べてみると、≪鳥獣人物戯画≫やそのほかの作品も、なにかの風刺なのか、それとも仏教などの教義をつたえるために人間を模した動物を描いたのか、などといろいろ考えて楽しむことができるかもしれません。
次回、夏季特別オークションは、7月10日(土)新橋オフィスにて開催いたします。
オークション開催日が以前までの告知と日程変更されておりますので、ご注意ください。
皆様のご参加をお待ちしております。
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夏季特別オークション
■開催日:2021年7月10日(土)
■下見会:
7月7日(水)10:00-18:00
7月8日(木)10:00-18:00
7月9日(金)10:00-15:00
■会場:アイアート株式会社 (東京都港区新橋5-14-10 新橋スクエアビル 3F)