LOT.220
藤原 定家
明月記断簡 (明月記巻物工藝画付)
[来歴]:円満院 旧蔵
〈作品について〉
平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての公家・歌人であった藤原定家は勅撰和歌集『新古今和歌集』『新勅撰和歌集』を撰進した他、宇都宮頼綱に依頼され『小倉百人一首』の撰者でもあった。また、『源氏物語』『土佐日記』など、現代を生きる私たちにも聞きなじみのある古典にも多く携わった人物である。
定家は10 代の頃からこの世を去るまで欠かさず日記を書き続けており、その日記が「明月記」となっている。当時の日記は現在のものとは異なり、朝廷の会議の儀式の手順を記録するものであったが、藤原定家による「明月記」では、自らの感情が率直に書き残されている。また、強情であったとされる性格を反映するかのような癖のある字体は、定家が歌人としての地位を不動のものとしたこともあいまって、近世に入ると小堀遠州や松平不昧のような茶人の尊崇をうけて、その書風は「定家流」としてもてはやされることになる。
「明月記」の自筆本の大部分は冷泉家時雨亭文庫の所蔵となっているが、本作品は円満院旧蔵の「建暦元年冬上」の原巻から断簡であり、円満院によって作成された複製工藝画の中でも所載を確認することができる。