[展覧会歴]:『リアル 最大の奇抜』No.2として出品 / 同展覧会図録 P22 掲載 (府中市美術館:2018年)
【作品について】
〈萩に鹿図〉では、地面はなく、鹿の姿と萩だけが描かれている。鹿は、体のそこかしこに触れる萩と戯れているのか、角の先で萩を揺らすようなそぶりである。その姿全体の本物らしさも素晴らしいが、最大のポイントは、目から生まれる表情だろう。つぶらな瞳は、まるで現代のマンガの中の夢見る少女さながらに、輝いているようだ。狙仙は、文化四年(1807 年) に号を「祖仙」から「狙仙」に改めたが、この作品は「祖仙」時代のもの。
狙仙の描く動物の迫真性というと、真っ先に挙げられるのが「毛描き」である。確かに、非常に多くの細かい線描で毛が表されているが、狙仙の動物を本物らしく見せているのは、毛描きだけではない。それぞれの動物の動きを的確に捉えた姿態、体のボリューム感、全体のプロポーション、そして目から生まれる表情。だからこそ、本物らしい質感と同時に、それを超えた生命感や、動物たちの物語を読み取りたくなるような「心」が感じられるのだろう
『 リアル 最大の奇抜』展覧会図録 解説より
( 府中市美術館:2018 年)