LOT.182

森 狙仙
萩に鹿図

  • 作品カテゴリ: 日本古書画
  • 91.0×36.7cm
  • 絹本彩色・額装
  • 右下に落款、印
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  • 予想落札価格: ¥1,000,000~¥1,800,000

[展覧会歴]:『リアル 最大の奇抜』No.2として出品 / 同展覧会図録 P22 掲載 (府中市美術館:2018年)

【作品について】

 〈萩に鹿図〉では、地面はなく、鹿の姿と萩だけが描かれている。鹿は、体のそこかしこに触れる萩と戯れているのか、角の先で萩を揺らすようなそぶりである。その姿全体の本物らしさも素晴らしいが、最大のポイントは、目から生まれる表情だろう。つぶらな瞳は、まるで現代のマンガの中の夢見る少女さながらに、輝いているようだ。狙仙は、文化四年(1807 年) に号を「祖仙」から「狙仙」に改めたが、この作品は「祖仙」時代のもの。
 狙仙の描く動物の迫真性というと、真っ先に挙げられるのが「毛描き」である。確かに、非常に多くの細かい線描で毛が表されているが、狙仙の動物を本物らしく見せているのは、毛描きだけではない。それぞれの動物の動きを的確に捉えた姿態、体のボリューム感、全体のプロポーション、そして目から生まれる表情。だからこそ、本物らしい質感と同時に、それを超えた生命感や、動物たちの物語を読み取りたくなるような「心」が感じられるのだろう

『 リアル 最大の奇抜』展覧会図録 解説より
( 府中市美術館:2018 年)